ウエーバー と ハコスカ のその後
管理人はバイク屋なのでいろんなキャブを触ったことがある。
バイクは車と違いインジェクションが一般的に採用されるようになったのが遅い。
排ガス規制が強化される2000年頃までは国産、外車問わずほとんどのバイクがキャブを採用していた。
一方車では1970年代からバイクより厳しい排ガス規制が課せられ80年代より急速にインジェクション化が進む。 このため車のメカニック達はキャブレターと疎遠になりうまく修理できる人達また急速に減っていったのであった。 そんな中でもまだキャブを付けてレースなどに参戦している人達がいる。今回は縁があってそんな車についていたウエーバーのキャブを修理した話。
触ったのはエムテックボディーさんのレース専用カー。
若いときに買ってその後譲渡するものの買戻し怒涛のカスタムを施した鬼のような車だ。
最初に問題になったのが燃料ポンプから送られてくるガソリンの圧力が高すぎて常にオーバーフロー状態だったこと。バイクと違い車は燃料タンクから油圧ポンプでガソリンを送ってくるんだけど、この圧力をフロートの浮きの力だけで抑えらえるもんじゃない。
レースで使うんだから常に全開、ガソリンなんてジャブジャブでいいでしょ~!って考えもあるけど、暖気運転やグリットについた時の待ち時間、なによりレースと言えどいきなり全開から車は走らない、必ず0からスタートするんで低中速も無視できない。
まずはこのガソリン行き過ぎ問題を解決するためにレギュレーターを設置して、ある程度の圧力がかかると燃料タンクにガソリンが戻るようにしてやる必要があった。
後から聞いた話だと車でキャブ付けて走るなら当然の装備らしいけどこの車にはついていなかったんだよね…。
ともあれ燃料ダダ漏れはこれで解消、同調も無茶苦茶だったんでバキュームテスターで同調を取り直してアイドリングもまともにするようになった。 これでしばらく様子見していたんだけど、中速域でのばらつきがひどくいまいちパワー感がないってことで全バラにすることになった。
バイクに着いているウエーバーはばらしたことがないので、そもそもウエーバー自体を触るが初めて。こうなると基本構造を知るためにためにも徹底的にばらして構造を理解する必要がある。
着いている車両は所謂ハコスカ、エンジン形式はL形というらしい。(管理人は車のことを全く知らないのでこの辺はあやふや)ガリガリにいじってあって排気量は3.2L、圧縮は11:1とか…らしい。
この仕様で7000RPMまでぶち回せるってんだから恐ろしい話だ。
パワーについてはシャシダイに乗せたことないからわからなけど、 直線での加速は凄まじく2LのN/Aとかじゃ全くついていけない。 ミッションはノーマル(!)なんで、1、2速ではホイルスピンして前に進めず、 常に3速発進、車体もFRPとかに換装して軽量化しているけどそれにしても早い。
キャブの構造は一般的な固定ベンチュリー、ただメインノズル(でいいのか?)出口がベンチュリー内に設置されているサブベンチュリー(写真)みたいなところにでていてここから吐出させている見たい。
ガソリンの計量はスローとメインジェットの2種類と加速ポンプとこれも固定ベンチュリーとしては普通の組み合わせだったけど、独特なのがベンチュリーの交換が可能なことと、スロー、メインの空気の計量をフロート室の大気解放通路を介してやってくる空気を使うこと。
この方式だと上のふたのガスケットがちょっとでもくたびれているとそこから空気の計量室にガソリンがながれこんで、結果的に燃調が濃くなってしまいそう。フルO/Hの予定だったのでガスケットは新調するにして、構造的欠点を補うためにふたと本体共に定盤つかって面とりを行う。
本当はフライスとかでやるんだろうけど薄物の部材や小さいものは定盤にペーパー当ててシコシコすれば十分面取が可能です。
特にふたはでかい癖に止めているねじが少なく案の定歪みが発生していた。
ここをシコシコと面だして次のステップへ。
低速ポート、中速ポート共につまりも出口の段付きもなくするすると作業は進行、固定ベンチュリーってかキャブレターの要、スロットルバルブのチェックへ。
このスロットルバルブ、ただの丸い板と侮るといつまでもキャブレターは直せません。この板のみですべての空気と混合気の量を調整しているのでちょっとした位置のずれやタイミングの相違で全く計量ができずエンジンがかからないなんでこともある超重要部品。
まずは簡単な全開チェック(写真)
…合ってない。全開になっていない。
これはあとからストッパー曲げて調整すれば簡単に直るからまぁいいか。
次に全閉時の気密性。チェックの方法としてはアイドリングストッパーのネジをゆるゆるにしてバルブ自体がキャブボディーに当たってストップするまで完全に閉める。
この状態で吸入側から覗きこんでどれだけ光が漏れてくるかって方法で簡易チェックできる。
もし全閉状態で光がダダ漏れ、もしくは各気筒ごとのキャブで全く違う様子ならいくら同調をとっても意味がない。予定していない空気が入ってくることになっちゃうからね。
これも案の定すっちゃかめっちゃか。こりゃスロットルバルブ外して位置調整確定。
で、最後に中速ポートの開き始めのタイミング確認。
これもみんな同じじゃないと同一スロットル開度で各気筒別々の燃調と混合気が入るので非常によろしくない。確認してみると…すげーずれてる(写真)
スロットルバルブを外して定盤曲がりをチェックしていると各バルブが一様に曲がっている。これじゃ中速でボコボコいうわけだわ。
本来ならすべて新品に交換するべきなんだけど、これがまたお値段が高い。全部(6枚)交換するとそれだけでン万もかかりそうなので、まずは各バルブの組み合わせでせめて隣り合うベンチュリーと同期するように組み合わせを変えて組んでいく。
それと同時に閉まりチェックも行うもんだからほとんどパズル状態となるが、ここが要、何時間か格闘してなんとか納得できる組み合わせを探した。
ここからは組み付けになるんだけど、まだやっていないので組んだらまた書いてみます。
きょうはここまで!