点火システムの話--2--
なぜ今更VOESなのか。単純にトッポジョージさんに書いてみろって言われたのもあるけど、 PCが身近になった上にパンやショベルなどにストローカー組んだりするのがここ近年(でも10年ぐらい。近年か?)でぐっと身近になったんで、今こそこの不遇のこのシステムの出番なのかもしれないと思ったから。
EVO純正なのになんでパンショベなのよ?ってとこまで突っ込んで書いてみる。
例によって書いている最中に飽きて何個かに分かれると思うけど、許してください…
今まで書いた中で関係ありそうなのはハーレーのインジェクションかな
EVO全般(1984~99年まで?)のインマニ付近についていたバキュームスイッチでVacuume Operating Electric Switchの頭文字を並べた点火のタイミングを決める補助をしていた機械。
構造そのものは実に単純で、インマニの負圧に合わせて内部ダイヤフラムが動き、それによって接点がくっついたり離れたりするだけ。
接点がくっつくとONとなり、ECMから来たVEOS専用の信号線がボディーにアースされECMはVOESがONになっていると判断する。くっついてなければ電気が流れずECMはOFFと判断する。
このON/OFFの状態をECMが受け取るとECMは予め準備してあった2つの点火曲線からON用、OFF用の線を選び点火のタイミングを決める。
ONの時は点火のタイミングが早いほう、OFFは遅いほうを選ぶ。(理由は後述)これによってエンジンの状態に最適と思われるタイミングを能動的に選べるようになり、EVOの性能向上の一役を担った。
このON/OFFのタイミングには特に調整機能を持たず(調整可能って人もいる。でもいじってもなんも変わらないし、そもそも調整するメリットがないと思うんだが…実際のところどうなんでしょ?) もうちょっとON/OFFのタイミング変えたいなーって人は豊富に出ている社外品から選択する方法もある。
よさげな感じだけど、なぜか軽視され場合によっては疎まれ蔑まれ外され捨てられ厄介物として扱われる事が多かったVOES、それは今までのビッグツインとEVOの違いと 日本人がハーレーに求める物との差から生じたものだったと思う。
そもそもVOESは最適な点火タイミングを取るためにハーレーが採用した機能で、似たような物は車あたりによくあった。
ハーレーがVOESを採用した理由で環境問題の影響で付けたって話も聞いたことあるけど、これは違うんじゃないかと思う。
VOESが採用され始めた1984年頃は世界的に見てもバイクの排ガスに対する規制はほとんどなく、ハーレーが特別に環境対策していたのはカルフォルニア州のみだったはず。でもVOESは輸出用とアメリカ国内用で仕様の違いなくみんな付いていた。環境対策での装備であればコストのかかる全車種装備ではなく他の部品同様、カルフォルニア仕様のみで採用されていたはずだ。
なんで、VOES自体はあくまでの性能向上のための部品だったと思う。
この最適な点火タイミングはエンジンと性能に対してであって、当時の多くの日本人ライダーが求めているものではなかった。
あのハーレー独特のアイドリング、所謂3拍子が出ない元凶だったんだよね。
時は1994年とか5年とか、日本では一連のレーサーレプリカブームが去り、折しも免許制度改正のタイミングも重なっていよいよハーレーが一番売れた時代に突入していくんだけど、 この流れで
「乗ってみたかったハーレーに乗ろう!でも古いのはぶっ壊れそうだからそんなら現行型のEVOだろう!」
とEVOが中古、新車問わず売れ出したが、例のアイドリングが出ない…
「なんでだ!ハーレーってあのアイドリングだろうが!なんで俺のは出ないんだ!は?VOES?そんなもんいらねーよ!何とかしろ!」
と、いうユーザーが続出、ハーレーらしいアイドリングを得るためにポイントやダイナSに交換する作業が非常に多かった。
交換するだけならいいけど、VOESの配線を引っこ抜く(絶対ダメ!点火時期がおかしくなって異常発熱しちゃって普通に走っているだけでオーバーヒートするよ)だけの
荒技まで登場した。
この状況は本国アメリカでも起きていたらしく、アイドリングの時のアクセルの位置で強制的にVOESをOFFにするための針金みたいなのもがCCI(カスタムクローム)で
販売されていた。
こんな部品が売っている程、当時はVOESが嫌われ者だった。
確かにエンジンへの負荷やパフォーマンスを求めないならVOESはいらない。ポイントやダイナSで十分だし、いかにもハーレーらしい走りはできる。
でも今思い返すとあの時はちょっと異様だったなと思う。
かくしてVOESはアイドリングっていう一点のみで蛇蝎の如く嫌われ外されていった。
やっぱり今回はここまでで…
次回に続きます。次はVOESの役割と優れた特性について書いてみたいと思います。
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