ハーレーのオイル漏れを考える

久々のブログ更新だが、前回のエボ編の書きかけをすっ飛ばして今一度オイル漏れについて考えてみようと思う。

ハーレーとオイル漏れは切っても来れない関係だろう。紳士淑女の皆様が乗っているハーレーも何某かのオイル漏れの症状により悩んだことがある人が多いはずだ。
その昔は…

オイルが漏れるのは入っている証拠だ!

などと豪語する猛者もいたが、オイルが漏れればやっぱり気になるし、何よりも汚いのでやっぱりなんとかしたい!ってのが心情だろう。

当然管理人もこのオイル漏れとは長い戦いを行っており、今でも戦いが続いている状態だ。
そして修理としては割と嫌な作業になることが多い。

は?オイル漏れ?そんなもんガスケット変えてさっさと直せばいいだろ!

そう思う方もいるだろう。確かにその通りなんだがこれがガスケット交換だけで済む可能性は極めて少なく、かなり厄介な修理となる事が多い。今回はなぜそうなるか、またなぜ古い車両になるとオイル漏れが多いのかその辺を管理人のグタグタ図面を交えて説明して見よう。

ちなみにガスケット(gasket)はアメリカなのかな?の呼び名であり日本ではパッキンという言い方のほうが一般的であるが、管理人の知識はハーレーから得ているものが多いので、本稿ではそれに習いガスケットという呼び名に統一させてもらう。

なぜオイルが漏れるのか?

まずは根本的なところであるが、なぜオイルが漏れるかをざっと書いていこう。
オイルに限らず、水でも空気でも個体以外の物は入れ物が不完全だと漏れる。隙間から出ていくのである。オイルが漏れるのもこの隙間が原因であり、隙間がなければ当然でない。

しかし、様々な部品を組み合わせエンジンだとミッションだの、ひいてはバイクという一台の車両にするので、どうしても部品を組み合わせなければならず必ず合わせ面は発生する=隙間ができる。つまりオイルが漏れるのはまぁ必然といえなくもないんである。でも直す。直さねばならんのが切ないところだろう。

ガスケットの仕事

んじゃガスケットの仕事を書いていってみよう。
まずは下の図(ってほどでもないけどさ…)を見て見よう。

なんのことはない、色違いのまっすぐな線が並んでいるだけだが、これぐらいまっすぐで凹凸がない場合、ネジで規定のトルクをかければガスケットは必要なく、オイル漏れは起きない。
ハーレーではまずお目にかかることはないが、国産車では単気筒などで割とよく見る手法である。

実はガスケットはエンジンにとっては単なる異物であり、精度や耐久性の面ではないほうがよい。なので、上にも書いたけど、隙間さえなければガスケットはいらないってことになる。

じゃあなぜガスケットがいるのかって言うとちと極端ではあるが、実際はこんなふうになっている

図では片面だが、実際は両方の面において多少の凹凸があり、必ず隙間ができてしまう。この隙間をなんとか埋めるためにガスケットをはさみオイル漏れを防ごうとしている。
図で示すと大体こんな感じ↓

(見ずらいな)緑色の部分がガスケットになる。ガスケット自体は紙のようなものからスポンジみたいなものまで様々あるが、基本は金属より圧倒的に柔らかい物質でできており、上下から挟まれる事で変形し密着し気密性=隙間を埋める。

ここまででガスケットは隙間を埋めるための単なる補助部品であり、本来であれば必要なものではないってのはなんとなくわかっていただけただろうか?

じゃあやっぱりオイルが漏れたらガスケット交換して直せばいいだけじゃねーか!

となるかもしれないが、これがそうも行かない。何度も書くがガスケットはあくまでも補助部品であり、もし当たり面がガスケットで補完できないほど歪んだらどうなるかということになる。

実はオイル漏れのほとんどの原因がこれ(全部じゃないよ。当然ガスケットの劣化も主原因ではある)で、要はガスケット挟んだだけじゃどうにもならないほど母材が歪んだためオイルが漏れるってのが主原因となる。
オイル漏れの修理はこの歪みを取るのが主な目的であり、ガスケットの交換はあくまでもおまけ…ってわけじゃないけど、ついでの要素が多くなる。

ちなみになんでこんな歪みができるのかってのは熱や水とかでの侵食だったり色々するが、もう一つの歪みの原因は実はガスケットだったりする。

もう一度ガスケットを挟んだこの図?を見てみよう。

この図での赤いライン、まぁ上の部品であるがまだまっすくであり、接するガスケットは潰れていない。
ただここで、両端をボルトで止めてトルクをかけるとしよう。もしガスケットを挟んでいない場合は硬い母同士が当たるので、どんなにボルトで押し付けてもなかなか歪みずらい。

でも、この図のように柔らかいガスケットが間に入った場合、ガスケットが潰れ歪む要素ができてしまうためボルトのトルクがかかる部分はどうしても歪んできてしまうことになる。

てことで、経年劣化の一部であるにしろガスケットが皮肉にも接地面を狂わせ、オイル漏れの原因の一つになりえ得るってことも覚えておこう。

ここまで、読めば

オイルがもれた!そうだ!ガスケット2枚挟んでしまおう!

って選択が間違いなのに気がついていただけただろうか?
2枚挟めば確かにその分隙間を埋める能力は高まるかもしれない。しかし、その分歪む部分も大きくなり、結果そのうち部品のほうがどうしようもなく歪んでしまう。

場所にもよるが、極度に歪んだ部品は交換するしかないのでオイルが漏れても決して2枚重ねはやめておこう。後で手痛い出費になるかもですぞ?

歪んだ、曲がった、さてどうする?

ここから修理方法である。
先にも書いたが、なぜ個人的にオイル漏れ修理が好きではないか、んで大変なのかをわかってもらえたら幸いだ。

まずは分解、今までのガスケット除去

第一の鬼門。
バラすのはまだいいんだけど、この今まで使っていたガスケットの除去がかなり厳しい作業となることが多い。

昔のガスケットなんてどう見てもちょいと加工した紙程度にしか見えないのに、何年も高いトルクと繰り返される熱と冷却によりそれはもう小学校の椅子の裏側に積み重ねられた鼻●の如くカッチカチである。
本当に元紙かよ。。。ってぐらいカチカチ

場所によっては薬品とかで多少は柔らかくなるんだけど、それでも硬い。とにかく硬い。こいつをありとあらゆる方法で除去する。

面のチェック!場合によってはスタッドをぬくぜ!

スタッドボルトが入っていない場合は、まぁさらっと終わる。ともかくありとあらゆる方法、手段を選ばず面を出す。オイル漏れ怖いもん。

そして第二の鬼門、スタッドボルト。こいつも長年刺さったままだとガスケットよろしく本体と激しく一体化している事が多い。

苦労して引っこ抜いているとこんなことが起こる。

はっはぁ!スタッドボルト抜けたぜぇ!と意気揚々としている管理人を地獄に叩き落とすこれ、固着したスタッドボルトがヘッドのネジ穴ごと抜ける図である。

こうなるとまた大修理となっていく。てかもうオイル漏れの修理の域から大きく逸脱した作業の開始である。

すべての準備完了!いよいよ面だし!

このようにありとあらゆる難関をくぐり抜け、やっと面だし作業を行う。
方法は様々。フライス使って大掛かりな場合もあるし、もっとちゃちゃっとやれる場合もある。でも方法は何であれ目的はなんのことはなく、ただただ平らにするのみである。

いよいよ組み付け!

ここまでやってやっと組み付けである。おそらく真ん中に書いた作業は一般の人が想像するオイル漏れ修理には入っていなくて、ばらしてここの組付け作業だと思われている人も多いんじゃないだろうか?

組付けは元に戻すだけなんで、それほど難しいことはないが、ガスケットの選定にはかなり気を使う。
おんなじ場所でもメーカーから材質までいろんな種類がごまんと売っているのである。

ここで間違うと今までの苦労が一気に水の泡になるので、今までの経験をフル投入して選択する。
ここまでやってやっと完了!となる

最後に

オイル漏れ修理の手順とどれだけ大変かなんとなくわかっていただけただろうか?
実際は全部が全部ここまで徹底的にやらないと行けないってわけではない。ここに書いてあるのは最悪の状態であり、必ずしも必要となる作業ではない。

でもね、オイル漏れ直してくださいーって言われると上記工程が頭の中に駆け巡り管理人は一瞬フリーズしてしまうのである。
ああ、またあの作業やるんか…と心の中で呟いてしまうのである。

もちろん、その後に上のような状況が起こり得ることを説明し、且つバラすと他の悪い部分も出てくるかもしれないことを説明してから作業開始となるが、みんな割と気軽にオイル漏れを考えているんだよね。

ともかくオイルが漏れる仕組みと修理方法はなんとなくわかっていただけただろうか?
結構大変な作業だから、さっさとバイク屋さんに持っていったほうがいいと思うよ。

てことで、終わり!


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