ある日いつもどおり横須賀のトッポジョージさんから電話がかかってくる。
トッポ「いやー、また面倒な仕事を頼まれちゃいまして。ツインカムの輸入新規なんですけど、排ガス試験に落ちまくってるらしいんですよねー」
管理人「加速騒音とブレーキはOKなんですか?」
トッポ「そっちは問題ないですけど、やっぱり排ガスに落ちるのでなんとかしてくれと。あれってサンダーマックスとか使ってクリアできるんですか?」
管理人「できますよー。過去に実例もあります。」
トッポ「へー。それ、誰がやったんてですか?」
管理人「俺です。」
トッポ「え?」
管理人「え?」
てな感じで先月からツインカムをはじめナックルだの古い車両を3台ほど並行輸入新規登録(以下めんどくさいから輸入新規と略す)する羽目になった管理人。
この輸入新規車検、普段の一般的な車検と違い事前審査やらそれにやたら時間がかかったりとか、車名はどーなんだとかそもそも一体なにをやるのかなどなど、普通の車検に比べるとブラックボックスであり難しいイメージがあるだろう。
で、実際はと言うと確かに面倒である。予想以上に時間がかかる事もあれば場合によっては車検所得不可能とかそんな羽目にもなるだろう
ってこで、今回はハーレーの年式にして2000年前後の製造年月日から大きく変わってしまう認定方法からざっくりした手順にここ最近の陸運局の見解や方針まで今年1年、何台か輸入新規と付き合った管理人が感じた過去との違いなど、皆様にお送りしよう。
製造年月日2000年前後で大きく変わる検査内容
まずはここに触れておこう。
2000年前後ってことはハーレーの場合ツインカムシリーズになった頃から今までの騒音規制プラス排ガス規制、加速騒音規制、ブレーキ性能規制等実際の走行状況に合わせた各種規制が導入された。
これらの規制は各陸運局でテストできるようなものじゃなく、それ相応の専門機関にて専用のコースなり試験場なりでテストして結果を出すものでありそれ相応のコスト(1台多分35万円ぐらい?)がかかる。
はっきり言って一個人がこれを突破するのはコスト的にも技術的にもかなりハードルが高く、このため如何に本国で安いツインカムがあったとしても日本で車検を通し公道を乗るのは面倒だ。
この辺に着いては次回のブログにて詳しく書こうと思う。
今回は1999年以前製造の所謂ふつーの輸入新規について書いていこう。
これだけ普通の車検と違うぜ!並行輸入新規!
まずはおさらい。
普通の車検(継続or構造変更登録)の場合はこんな手順だろう。
- 車検場の予約とる。
- 検査場持っていってライン通す
- 書類もらって完成!
実にシンプルである。
必要な書類も・・・
- 車検証
- 納税表明書
- 自賠責証書
- 該当するOCRシート1枚
- 重量税納付書
- 場合によっては手数料納付書
ざっとてかこんなもんだろう。
ちなみに昔は継続車検であろうとなんだろうと必ずOCRシート等にハンコが必要だったが、ここにもしっかりハンコ不要の波が来ておりバカバカしい押印はほとんど要らなくなった。
現在バイクの書類やり取りでハンコが必要なケースは、バイクを譲る際に譲渡書に一個と非常に簡素化された。
話がそれたが、次はメインの輸入新規登録だ。
まずは手順を書いていこう。
- 車両の写真(基本は前後左右の4枚)を撮る
- フレーム、エンジン番号の写しを取る
- エンジン出力がわかる資料を準備。なければ実測で書類作成
- フレーム、エンジン番号の解説を用意。できればマニュアルや然るべき書籍などから準備
- 事前審査書類作成
- 稟議が降りるまで必要であればなんどかやり取り
- 稟議が降りたら車検予約
- 検査場持っていってライン通す
- ライン通って測定とか色々やられる
- 職権打刻
- 書類もらって完成!
となる。すでに継続車検に比べて相当な手間である。
続いて必要書類。
- 事前審査申込書
- 該当車両の輸入通関証明書
- 輸出国である国の然るべき機関が発行した車検証等に該当する製造年月日を証明できる書類。所謂ピンスリとか
- エンジン出力の解説証明
- フレーム、エンジン番号の解説証明
ここまでが車検当日までに揃える書類。次は車検当日に必要な書類となる。
- OCRシート。多分1号
- 手数料納付書
- 検査票
- 重量税納付書
- 輸入業者発行の譲渡書
- 車両税金申告書
- ほぼ要らないが、ひょっとしたら委任状
こうである・・・書いてて嫌になってきた。
ああーーん?なんじゃこの書類たちは!わからんわ!
と、いう人もいるだろう。管理人も全くそう思う。ここで更に個人的おさらいも兼ねて一体各書類がなんなのか分かりづらいところを説明していこう。
並行輸入新規登録にまつわる各書類の解説
次に各書類の解説をしていこう。輸入新規って結構お金かかるよなーって思う人もいるだろうが、これだけの書類を作成準備し、何度か陸運局とやり取りを経てやっと登録できるのである。お値段が張るのを理解して欲しい。
- 事前審査申込書
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事前審査書類の骨格となる書類。独立票製法人 自動車技術総合機構なるいかにもなところからダウンロードして使用する。
ダウンロードするページはここで、このページの真ん中ぐらい『並行輸入自動車関係』の項目にある基本となる届出様式の第一号と2号、それに第4号がバイクの登録には必要となる。内容に着いては説明するよりダウンロードして見てもらったほうが早いので省略。
ちなみに割りと頻繁にコソコソとアップデートしやがるし、書式が古いと事前審査に持っていった時に突っ込まれる、最悪受理してもらえないとかもあるので、使う際さいはその都度ダウンロードしよう。 - 該当車両の輸入通関証明書
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これと次に説明するピンスリは超重要書類だ。
両方揃わないとまずバイクとして真っ当にナンバーを取るのはほぼ不可能なので大切にしよう。この通関証明書は対象車両が諸外国よりモーターサイクルとして輸入された事を証明するための書類である。
ではなぜこんな書類が必要なのか?
仮にこの書類がないバイクがあったとしよう。そうするとその車両の出どころはどこか?という話になる。組み立て?盗難車両?はたまた・・・となり、登録する際には完全に新規の新型車両として形式指定認定を取っていく形になる。
って事はどんなに古い車両でも現代の、たとえば排ガス規制とかそんなのをクリアしなければならなくなりそんなものは技術的に不可能=登録できないって図式になる。何いってんだ!どう見てもナックルの純正だろうが!これが新車のわけあるか!
と、普通ならなるがそこはお役所仕事。そんなおためごかしは通じずあくまでの書類上でその車両が健全なものかを出すにはどうしても必要なんである。
通関書はほとんどがただの印刷されたA4の紙であるが、あまりの重要性のため事前審査書類に原本を着けず、コピーのみ提出する。
そして実際にナンバーを取るまでは自身で保管し、その車両の履歴を示すものとなっているので、くれぐれも丁重に扱おう。 - ピンスリ、タイトル書類
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これも重要書類で、並行輸入車の場合通常は車両、通関書、ピンスリ/タイトルの3点セットが基本である。
この書類の主な目的は輸入前に走っていた国がそのバイクを何年式のものとして認めていたか?の証明に使う。
どういうことかというと、日本はその車両が作られた時の保安適合基準をもっていれば公道を走れることになる。
上にもちょっと書いたが例えばナックルとかパンが当時の日本の保安適合基準、例えば騒音規制やヘッドライトの明るさ、ブレーキの性能などなど当時基準を持っていれば車検取れるよ!なんであるが、んじゃその年式を誰が証明するのか?ってのがこの書類の役目で、前走っていた国がこの年式だっつってんだからそれでいいだろーって事になるのです…はい。
書いていて思ったがなんか主体性ねーなーちなみにアメリカやEU諸国などから輸入する場合はこの辺の事情は浸透していて、比較的ちゃんとした書類がついてくる。
が、他にあんまり前例のない国や輸入業務に慣れていない人が向こうから輸出した場合とかだとこのピンスリに当たる書類が全然違うものが着いてきたりすることがあるので、個人で輸入する場合は気をつけよう。 - エンジン出力を証明するための書類
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あんなに古く排ガス規制も騒音規制もろくすっぱないバイクのコレを証明して何になるんだよ…と個人的にも強く思うが、どんな古くても最高馬力/回転数と最高トルク/回転数の資料がいる。
これはほとんどの車両はマニュアル等のコピーでOKだが、ナックル以前の車両や現代のツインカムなどはなぜかメーカーが最高出力を公表していなく、資料探しに奔走したりする。
なければシャシダイに乗せて実測ってパターンもあるので、要注意である。 - フレーム、エンジン番号の解説証明
一体なんだって感じだが、例えば9D12345H5とかの番号があった時に、9Dはこういう意味で、最後のH5は年式でーってを解説しなければならない。コレも大体の年式の車両はマニュアルからの引用で十分だろう。
ここまでが事前審査書類に含まれるものである。
これらを提出し、陸運局が登録可能かどうかを吟味し、持ってきていいよとなれば当日必要な書類をもって陸運局に行くとなる。
当日用意する書類については変わったものがないので、ここでの説明は割愛しよう。
車名にハーレーってどうすると認められるのか?
自分のバイクの車検証をシゲシゲ眺める機会は早々ないと思うが、車検証には車名と形式というそのバイクの根幹をなす部分をお国様がどう考えたのかというものが表示されている箇所がある。
形式の部分についてはメーカーが新車として登録した時じゃなければまず不明になる。
このため並行輸入車の場合はバイクでは(車はどうなんだろ?)圧倒的に不明が多く、「ここが不明になってるから平行だな」との判断に使うぐらいだ。
んじゃ、もう一つの「車名」はどうやって決まるのか?
コレを説明する前にまず国の機関たる陸運局の見解と、我々ハーレーの一般ユーザーが持つ認識との相違について説明しておこう。
我々ユーザーはハーレーをなぜハーレーと認識するか?
なんか哲学的な書き出しであれだが、普通の人であればエンジンがハーレーのそれだったらハーレーと認識するだろう。
仮に人に「なんのハーレー乗ってるのー」とか聞かれたらだいたいはエンジンの形式を持ってショベルだのエボだのと答えるだろう。
我々ユーザーはハーレーの種類をエンジンを持って認識しており、フレームについてはあえて聞かれなければ言及しないだろう。
んじゃ、お国はどうか?
こっちは非常にシンプルでフレーム形状とそれに絡む年式でハーレーかどうかを認識する。
エンジンの見た目なんか関係ない。もし関係するとすれば打刻の書体のみである。
この辺を前提として陸運局がハーレーと認める案件を書いていこう。
なお、ビックツインを前提に書く。スポーツとか入れ始めるとキリがないのだが、基本は一緒である。
- 1958年以前の車両
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まずはリジットであることが前提。このへんは彼らもしっかり認識している。
その上で下記箇所がすべて鋳物でできていることが確認できるかどうかが重要。
- フレームネック
- エンジンマウント
- サイドカーマウントループ
- シートポスト
- リアアクスルマウント
以上、5箇所が鋳物でできていればコレは純正フレームなんでハーレーだね!となり、車検証にもハーレーダビットソンと書かれる。そうじゃなければ不明となる。
- 1959年以降の車両
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まずはリジットじゃないこと。リジットでれば上記の条件を満たしていても車名は不明だ。つまりショベルリジットは今なら全て不明となる。
リジットじゃなければ最低限フレームネックが鋳物で、フレーム番号、もしくはエンジン番号の打刻の書体が陸運局が持っている資料の書体と一致すれば車名がハーレーとなる。
以上である。要するにフレームがノーマルならハーレー、そうじゃないなら不明って事になるが、明らかにノーマルフレームでもちょっとモールディングしてあったり慣らしてあったりすると鋳物じゃねーじゃねーか!!!!などといちゃもん(現実的に我々ハーレー屋のほうが沢山の車両を見ており、それが純正かどうかの見分けも陸運局の5点セットなんかより遥かに正確に見抜く。明らかに知識が下のほうが立場を利用し、我々の利益を阻害する行為はいちゃもんといって差し支えないだろう。)を着けられるが、それも仕方ないことなので、覚悟しておこう。
なぜこんな面倒な事になったのか?
細かく書くと長くなるけど、要するに
1、平成10年頃までは陸運局もこの辺に明確な基準がなく登録は割りと好き放題にできた
2、このため本来はサスが着いていた車両を後からリジットに改造する事例が多数起きる
3、コレじゃいかんでしょとどうすればハーレーでかつリジットになるかを明文化。それにより後から改造したものをおかしいと検査官が気がつくように。
超ざっくりではあるが、こんなところだろう。
正確な時期はわからないけどだいたい平成15年前後を堺に、輸入新規におけるハーレーか否かの判断基準が決まって、運用開始。
ただ昔はよくあったのだが各検査場でこの手の大きな問題ですら判断基準の統一がなされておらず、厳密な運用が全くできてなくて、お国の機関のくせに地方格差が生じるというなんとも日の丸お役所のだめなところを凝縮したような体たらくが続く。
流石にこれじゃいかんだろとおそらくここ5~10年ぐらいの各種手続きの電子化に伴い、これらの基準の厳格な運用開始・・・となっているらしい。
もしこの流れで陸運局指定のハーレー5点盛りセット(今度からこう呼ぶ)の要件を満たさず車名がハーレーになっている場合どうなるか?
コレも過去に例があり、つい最近も他の地方であった話だが、検査官がこのバイクはフレームを改造したのではないか?という疑いを持たれる。
最悪あれこれの条件が重なれば、車検が取れない=公道を乗れなくなるなんて自体も起こり得るので、輸入新規登録の際は十分に車名には気をつけよう。
長くなったのでコレでおわり!
次回は2000年以降、排ガス規制ができた車両の並行輸入はどーなんだ?編の予定。
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