ピストンとシリンダーのお話
※2019.6.7追記※
なんだか質問のところでキックについて更に掘り下げる羽目になった。
もともとダイナSの質問だったんだけど、流れでキックの話に。この記事に書いてある事もそのながれから見ると間違いもあるけど、改正しない。その質問は→ダイナSの火花が飛ぶ領域(点火調整)になります。
※追記終わり!※
かからないとか難しいって言われているハーレーのキックスタート
でも実際はそんなでも無い。コツと原理と理屈さえわかってしまえばなぜからキックとかの儀式が必要かわかると思うんで、その辺を書いていくよ。
今更なんで…と思うかもしれないが、寒くなるこれからキックでのエンジンスタートはだんだん難しくなるし、最近あまりキックの事聞かれなくなって忘れそうになりそうだからです!
てことで、まずキックでエンジンをかける時によく聞く圧縮上死点とデコンプのとは何なんだを考えてみましょう。
例によって書いてある事は管理人個人の理論であり、すべてのバイクや手動でエンジンかける内燃機の始動性を上げるものではない。
更に、バイクによってはこれから書く方法で始動性が下がる可能性すらある。なんで、あくまでも理論上での話だと思って読んでもらいたい。
まずキックでエンジンをかけよう!ってなったらキックレバーをキコキコ踏んでレバーが重くなり動きづらいところを探すと思う。これが圧縮上死点の位置となる。
で、ここからさらに糞力を出して、キックを勢いよく踏み付けてクランキングさせてエンジンをかけるのがハーレーの普通だろう。
だが圧縮がしっかりしている250CC単気筒やSRなどはこの状態から踏むのは非常に重たいため、この為に手動であれ自動であれデコンプを使い圧縮を抜いてシリンダーを下死点方向に移動させてからキックを踏む。
デコンプなんて使わん!って方もいるであろうが、基本はキックのレバーを止めた圧縮上死点ではもはやエンジンはかからず次の圧縮か他気筒の圧縮で爆発を開始するだけなので、重たいのを踏む理由は全くないと知っておこう。ただしこの圧縮でエンジンがかかりだす相当絶好調でせっかちなやつもいる。
でもデコンプがない場合はやっぱり上死点から踏み下ろすことになる。ハーレーの場合もこれに該当するが、ここにも書いたようにハーレーの場合はキック一発踏んだだけじゃエンジンはほとんど回っていない。
このほとんど回らない状態からエンジンをかけようってんだから、条件が悪いコールドスタートではそれ相応の儀式がいるのである。
キックオンリーの諸兄であれば、この始動時の儀式は何がしか行っているであろう。
管理人がいる当地は雪国であり、太平洋側や西日本からみればまさに僻地であり、雪も降るためバイクに乗るには過酷な環境である。また気温も1度とか2度が当たり前、5度とかなんて行った日にゃTシャツ短パンで海にバカンスに行きたくなるような(ちょっと盛った)温度に感じるレベルで寒い。
だがしかし、こんな環境でもキックでエンジンをかける。しかも電源入れてから5回踏んでかからないようならバイクの異常を疑う。
それぐらいハーレーでのキック始動は容易な部類であり、またちゃんとやればかかる。その手順とやる理由を書いていく。
まずはキャブのベンチュリーをガソリンでばっちゃばちゃにする。まだイグニッションはOFFの状態。
方法はキャブによって様々であるが、加速ポンプであったり、ティクラポンプであったり、チョークバルブで入口ふさいでアクセル全開でキック踏んで、フロートから吸い上げる方法もある。このチョークバルブを手でやれば大体のキャブのベンチュリーはあっという間にガソリンで満たされる。
なんでこの大量のガソリンが必要なんだというと、冷えている状態はガソリンは非常に燃えずらい(より正確に言えば気化しずらい)状態で、点火しにくい。
そんなに燃えずらい状態なら大量に送り込んでちょっとでも燃えやすい部分を作ってやろうぜ!っつーことである。つまり質より量作戦である。
どれぐらいだすかって言うと、加速ポンプなら大体20回ぐらいあおり、チョークバルブや手でふさぐ作戦ならアクセル全開で2~3回はやっても大丈夫だし、これぐらいやらんと意味がない。なんせ質より量作戦だからね。
ただ回数と量は同じバイクでも気温で全く変わってくるからあくまでも参考で!でもこれぐらいやってもかぶらないから安心してほしい。
いわゆる空キックってやつである。まだイグニッションはOFFのまま。
このキックで上の工程でベンチュリーに吐き出されたガソリンをシリンダー内に送り込む。
この時に注意してほしいのがアクセルを全開にする事である。
よく見るのがこの空キックの際にアクセルを全閉でキック踏んでいる人が多いが、これをやるとガソリンと空気がシリンダー内に入らないだけじゃなく、中の空気(酸素)がシリンダーの中から出ていき、始動性を下げる事になるだけだからだ。
理由はエキゾースト側は圧縮により勢いをましてシリンダー内の空気が出ていけるけど、スロットルが全閉の場合インテーク側はアクセルバルブによってその大半の通路が閉じているため、極めて通路が狭く(狭いなんてもんじゃないぞ?スローミクスチャーの通路とスロットルバルブのほんのちょっと隙間しかないからね)てまともに空気を吸い込める状態じゃないからだ。
例としてエンブレ時を思い出してほしい。坂道とかでエンジンブレーキを効かせるときってアクセルを全閉にすると思うけど、この際にエンジン内部で起きているのは、上に書いてある状態でシリンダー内の空気がバンバン出ていくから真空状態になりそれが抵抗となってエンブレが聞くとなる。
それぐらいアクセルの全閉ってのはシリンダー内の空気を追い出すってことを覚えておこう。
ってことで、この空キックはガソリンと酸素をシリンダー内に満たすためやるって事を理解してアクセルを全開にしておこう。
また、この段階でいい場所(エンジンの始動がよいピストンの位置がある。ハーレーは2気筒なんで恐らくフロントがリアのどっちかの上死点付近だと思われる。この上死点でキックを踏むのも始動性を上げる一翼を担う)にキックを止めるのも重要な行為だが、相当なれないとわからないだろうからなれたらチャレンジしよう。
こんな感じで空キックを2~3回程度やり、たっぷりとシリンダーにガソリンと空気を送り込み次のステップに進む。
またである。でも加速ポンプとかティクラポンプが付いている車両だけで。まだイグニッションはOFFだが本格的な始動に向け準備を行う。
この段階でチョーク使ったりなんかをするんだけど、めんどくさいんで各キャブの時に管理人がどんな事をするか書いておくんで参考にして。
リンカートは全開から2ノッチ程閉めてアクセル開度を約1/8に設定
ゼニス/ベンディックスはそもそもキックでエンジンかけない、かけたくないけどたぶん次ケイヒンバタフライとおなじかな
バタフライはまた加速ポンプあおってガバガバガソリン出す。大体10回ぐらいかな。チョークバルブは閉じずアクセル開度1/8で待機。
SU,CV,S&S一味は加速ポンプ5回ぐらいあおって(Bは除く。SUはティクラもみもみ)チョーク引っ張ってアクセルから完全に手を離して待機
ここで準備完了いよいよ始動である。
ここまでやってやっとイグニッションをON、いよいよ始動となる。でも実際に時間にしたら30秒ぐらいだと思うよ?
で、キック踏んでエンジンかけるんだけど、この時に注意が必要なのはアクセルをがばっと開けず、そっとしておく、もしくは全く動かさない事だ。
これもよく見るんだけど、ちょっとでもエンジンかかるとアクセルをガバっと開ける人がいるが、あんな事やっても急激なベンチュリーの変化に耐えられずエンジンが止まるだけだ。
エンジンかけてスロットルガバガバ動かしてエンジン止めてそれで始動性が悪いって言う人もいるが、始動性が悪いんじゃなくて、原理に則ってアクセルワークをちゃんとできなかった自分を呪おう。
止めたらまたかければいいじゃん!ともうタフな方もいるだろうが、またかけるのも面倒だし、何よりもこれで失敗すると次の始動はえらく苦労することになる(後述)。
なのでキックでエンジンをかける時は、急であれなんであれアクセル操作は避ける。かかったら操作する。これを心がけよう。
ともかくこんな感じである。
一つ一つの儀式的行動にはエンジンが機械たるゆえに純然とした目的と意味がある事を理解していただけただろうか?
もし絶好調ってかちゃんとメンテナンスしてあるバイクならこれで多くて5回も踏めばエンジンがかかるはずだ。
ただ本当に個体差がでかいんで、すべてがこの方法ってわけに行かないこともある。でも基本は新しい空気とガソリンをシリンダー内に大量に入れるための行為だという事を肝に銘じておけばおのずと自分のバイクの癖をつかむことができるだろう。
んで、この冷えている時の始動と考えた方はほぼすべてのガソリンエンジンに対して有効なんで、除雪機とか発電機のエンジンがかからない場合にも応用が聞くって事お覚えておこう。
あるあるです。これやると次の始動性がガクッと落ちるためになるべくやりたくない行為です。
なぜ始動性が落ちるのか、完全な推測ですが、度重なる儀式の果てに大量に送り込まれたガソリンは短時間の、しかもエンジンの冷えた燃焼では完全に燃えきらずむしろ燃焼に有害な状態を作ると思われる。
要は未燃焼ガスが燃焼室内に充満してまともに火がつかない状態って感じなんだろうと思っている。
これの対処方法は…
と、大体こんな感じになる。
間違っても必死になってエンジンをかけようとしてはいけない。時間と体力の無駄である。
なんか長くなったけどこれでおわります。
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