ハーレーのサスペンションの話--3--
第一回目は
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調べたらショベル、パンのバルブスプリングが結構やばかった
はぁぁ・・・いいバルブスプリングねーなー。いっそ作っちまうかぁ という、いつもの適当な思いつきから調べて…
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これ。第二回目(前回)は
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調べたらショベル、パンのバルブスプリングが結構やばかったその2
その1 [blogcard slug="/shovel-pan-valve-spring/"] さて、…
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です。
では3回目いってみよー!
つーことで軽くおさらい。
おさらいとかいらん!って人もいるかもしれんけど、書いている本人に必要だったりする。
まずなんで管理人がバルブスプリングを作ろうかと思ったか?
現在売っている社外品は高いのはめっちゃ強い傾向があるし、安いのは・・・もうスプリングとして駄目なのが多いから
まずここからがスタート。
で、作るにあたり設計を始めてみると
パンからショベルまで続くバルブスプリングのセット長は現代のスプリング工学に照らすと短すぎる!
ふーん。でもなんでそんな無理な設計になってんだろうな?
と、疑問に持つ人も多いだろう。実際管理人もそう思う。
ここからは推測だけど、この”なぜ”を考えてみたい。
まずパンヘッドの初期が1948年。ナックルから時代が変わり、設計の最初からヘッドにオイルが周り回収する機構をもった。
この際にオイルが漏れないようにその通称名どうりにパン(まぁ鍋だな)をひっくり返したような実に質実剛健な方法で蓋をした。
で、バラした人ならわかると思うけど、このパンの蓋の部分とバルブスプリングリテーナーのクリアランスは極めて少ない。ちゃんとしたバルブ突き出し量で組んでてもなんか当たりそうに見えるほど少ない。つまりここの部分にスペースが無い。
このためにバルブスプリングのセット長はスペースの問題でどーしても短くならざるを得なかったのだろう。
また、当時スプリングを縮めすぎると良くない!ってのが果たして理論としてあったのかどうかわからんのである。まぁ仮に当時の純正スプリングがこの80%の不文律を守っていたとしてもスペースが足りないのは確かである。
パンヘッドはこんな感じで短かったんじゃないだろうか?要するに蓋をするのが優先で、スプリングは多少無理してでも押し込んだ形式。
んじゃショベルはって言うと、単にヘッドまわりの作りをパンからコピーしたから・・・何じゃないかと思っている。
んで、ずーっとそのまま来たけど、いよいよ後年やばいと思ったのであろう。1982年のショベルヘッド大改修の時にこの辺の設計は見直され、より余裕のないアウタースプリングを弱め線を細くしてクリアランスを確保。その代わり多少余裕のあるインナースプリングを強くしてその分を補完しているって感じになった。
とまぁ完全に推測どころか妄想のとしか言いようがない話なんだけど、こんな感じだったんじゃなかろうか?
ではこれを前提に一体どんな設計になったかを書いていってみよう。
今までの経緯と上記の理由により設計的には以下のようになった。
まずは箇条書きをしてそれぞれをどう解決していくかを書いていく。後具体的な数値(長さとか強さとか)は現段階では未確定の要素もあるのでちょっと書かないよ。まぁ大した問題じゃないでしょう。
こんな感じである。
特に最後!これが面倒でねぇ・・・ともかくこれをやめたいのである!では順を追って書いていってみよう。
ともかくこれは絶対となる。
更にいうなら80%ちょうどでははあまりにも余裕が無いので、もっと余裕を持ちたいところ。
色々検討した結果、ノーマルのセット長ではこの課題をクリアするのが結構面倒ってか困難なのがわかってきた。
こうなるとバルブのセット長を伸ばすしか無いのであるが、伸ばすためには次の3通りとなる。
①、シートリングを削って飛び出させる
②、バルブステムが長いバルブを作って飛び出させる
③、バルブスプリングリテーナーを使いオフセットさせる
ぶっちゃけ理想は②だったりする。この方法なら現代的ちょいと背の高いリップシールをつけてもコッターとの間に余裕ができるし、結構いい事ずくめだったりする。
①についても似たような作用があるが、燃焼室が広くなり圧縮が猛烈に落ちるという欠点がある。
何よりこの2つの方法だとロッカーアームとのあたりが変わってしまいろくなことが起きないというもうどうにもならん欠点があるため却下となる。大体バルブなんか作ってられん!
上記の理由によりもう③しか無い。
これは市販品のオフセットアッパーリテーナーと併用することで解決とする。
で、本当は思いっきりオフセットさせたいんだけど、バネ自体はパンと共通化したい。そうすると思いっきりオフセットさせるとパンカバーにあたっちまう。このためオフセット量は0.06"=1.52mmとした。これだとメーカー曰く当たらん(最初0.6"のやつどう?って聞いたら当たるからやめとけって怒られた)とのこと。ただし、バルブ突き出し量がオーバーしている場合はこの限りではない。
ちょっと前後するけど、これをやるためにオフセットが必要だった。
前のブログにも書いたけど、インナーは多少余裕があるにしろアウターについては全く余裕が無い。
このため、アウターについてはノーマルと一緒ぐらいの強さにするとどーしても設計に無理が出る。
しかし、上記オフセットをすることによってまぁなんとかなった。
具体的には、線の径はほとんど変えず、巻数を1/4ほど減らし自由長を若干長くするという設計になる。
これでノーマルの設定の幅以内で最弱の強さが設計できた。
対してインナーはアウターがちょいと弱くなった分、設計的にも余裕があるので後期型と同等、つまり前期型より強くすることにより弱くなった部分を補うような形にとなる。
んで、これも話が前後するが使えるような長さに設計してある。もちろんリテーナーにバリッと座るようにスプリングの内径はノーマルと同じ。
まさに我々メカニックの悲願である。
斜めになっていなく、それほど強くなく、強さとか大きさが安定している…ああなんて幸せなことか!
このバネは日本国内で設計製造するので、特に指定がない場合はJIS企画に準拠しちゃうとのこと。それがどの程度なのかは調べていもいないが、量産品としては申し分ないはず・・・だ。
ちょっと駆け足だったような気もするが、バルブスプリングの設計についてはこんな感じになる。
・・・おめー、自分が楽するために作ってるな?
と、思った方まさにそのとうりである!
もー部品探すの嫌なんよ…こんなことに時間かけず他の事に時間かけたいんよ・・・だからポンッと組めるバルブスプリングが欲しいんよ…
現在は大筋設計も終わり、試作、テストとなる。
このスプリング、設計自体は机上ってかPCソフトウエア上でサクッと行えるが、やっぱり実際作ってみるとビミョーに違うことが多いらしい。なので試作とテストはそれなりに必要だとか。
これについてはなんとか秋ぐらいまでに結果を出したいと思っている。
乞うご期待!
バルブ編はひとまず終わり!
バルブスプリングですか?そんなに折れます?年に一回ぐらいしか見ないけどなー
と言ってのけた某バイク屋。
年イチって多くね?いや、十分多いだろ!感覚がずれてきてる・・・
プロアンサーではなんか作ろうと思っているバイク屋から車屋まで質問に回答してくれるプロの方を募集中です!
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