フライホイール(クランク)の芯出しを解説

フライホイールのイメージ

ケンチョッパーのブログでフライホイールの芯出しについてちょっと書いてみたんだけど、

おめー、そんなのでわかるわけ無いだろ!

という実に有り難いコメントを頂いたので、改めてもうちょっと真面目に書いてみようと思う。
本当はケンチョッパーのブログで書いても良いんだけど、あまりにもテクニカルってかメカニック的で長文になりそうだし、バイク屋のブログとしてはどうかなーと思ったので今回はプロアンサー上で書いていってみよう。

ちなみにフライホイール(クランク)と同様に何かと話題やネタにされやすいフライホイールバランスについてはこっちでガッツリ書いたので、参考にしていただきたい。

それでは割と真面目に書いていくよ!

そもそもフライホイール(クランク)の芯出しってなに?

こんなところを見る人は今更説明は不要かと思うが、一応ざっくり説明しておこう。

1990年頃のエボ以前(多分ね。正確な年式忘れた)クランクはご存知のように組み立て式となっている。ピニオンシャフト、クランクピン、フライホイール✕2、そしてスプロケットシャフトの5ピース構造となっており、それぞれのシャフトはフライホイールに開いているテーパー上の穴にぶっ刺さっている。

当然これらは分解が可能で交換用部品も各社から色々な部品が販売されており、オーバーホールの際には交換することが多い。

バラせばせっかく各部がまっすぐになっていたのに、それが崩れる事がある。この分解して交換してそして再度組み立てる時に行うのが芯出し作業である。

この芯出し作業、最終的はマニュアル上にある既定値ですら0.03mm以下の振れに抑えるという10キロ以上ありそうな重たいクランク一式に対してかなり小さな数値まで追い込まなければならず、以外と筋力も使う。

またそれだけ小さな数値なため、ほんのちょっとの些細なことで全く芯が出なくなることがある。
どんなに頑張ってもちょっとしたショックで芯がずれる、全く理想の数値に近づかないなどがあるときはこの些細なことが障害になっていることがあるので、本組の前に以下のことを確認してみよう。

シャフトのテーパーに傷がある

一体どんな傷があると駄目なんだよ!

と思うかもしれないが、横傷の場合はまぁ大丈夫なことが多い。
問題は縦の傷で、この場合髪の毛一本分の傷でもうまくいかない事が多いので、よーく確認してみよう。面倒ならさっさと新品にしてしまうのがその後楽ができるよ

フライホイールの穴に傷がある

これも上記同様であるが、更にシビアといっていいだろう。特にクランクピンが刺さる穴に傷があるようだと絶望的である。

シャフトやテーパーにゴミや汚れがついている

これはきれいにして組めば問題ないが、この汚れやゴミもまたシビアで、少なくとも目視できる程度のホコリが入ってもアウトである。ホコリすら、である。

以上、3点がばっちり問題ないようならいよいよ本組に入ろう。

一体なぜ芯がずれているかを見極めろ!

さて、諸問題をクリアした諸君はいよいよフライホイールを組んで芯を出さんと意気込んでいる頃であろう。
芯出し作業そのものは比較的単純で、ずれている部分にいろんな力を加えてそれを修正していく作業となる。ただし、そのズレが一体全体どういうズレなのか?を的確に見極める選球眼(なんか違う気がするが良いか)が必要だ。 次にどういったズレが有るのかを説明しよう。

横ずれ

クランクの横ずれのイメージ図

例によって分かりづらい事この上ない図だが、これが横ずれである。また呼び名が正しいかどうかわからない。あくまでも個人的にこんな風にずれているのを横ズレてと呼んでいると言っておこう。

この横ずれ、言葉で説明するのが難しいが、クランクピンに対して各フライホイールが・・・なんていうんだろ?横にずれているとしか言いようが無いんだけど、そんな状態だ…

ちょっと説明が難しいので、正しい状態だと以下の用になる。

正しく芯が出ているクランクを横からみたところ

こうなる。
青い丸と赤い丸がフライホイールそのもの、黄色いのがクランクピンで、緑の丸が各シャフト(ピニオンとスプロケね)だと思ってほしい。

まずはこの横ずれを完全に取り払うところから芯出しはスタートである。

ハの字

この名前も管理人が勝手に呼んでいる名前で正式名称は知らん。つーかあるのかな…正式名称。図で見ると

芯ずれのハの字型模式図

こんな感じだったり、

芯ずれの逆ハの字型模式図

当然逆パターンもあればこんな真横からみて分かるのではなくいろんな場所でこんな感じになっている状態。

要はほぼ同じような位置で同じ方向に開いている、もしくは狭まっている状態のことを便宜上ハの字と呼んでいる。

フライホイールの芯出しの際によく見られる図だと思う。だいたいの人がこの状態を思いつくのではないだろうか?

両方同じ

一番ずれているので厄介なのがこれ。図で示すと…

同じような場所でかたっぽが開いていて片方が狭まっている状態だ。これが出ると頭がいたいのである。

なぜこうなると頭が痛いのか?
今まで紹介してきた芯ずれは両方を同じ方向に動かせば解決するので、例えば万力であったり、ネジであったりで開いたり閉じたりすれば直せる。

だけどこの状態だと片方だけをうまく動かさないといい値が出ないのである。クランク(フライホイール)の組み立て構造上、この片方だけを動かすのは至難の業だ

ケンチョッパーのブログでショベルの芯出しがめんどくさいと書いたのは、この状態がほぼ必ずといって起こるので非常にめんどくさいんである。

以上5つの状態がフライホイールの芯ずれの状態である。

え?たったのそれだけ?

と思われる方もいるであろう。が、たったの5点である。しかも複合的に起きるのは横ずれとその他4点の状態だけであり、横ずれさえきれいに取れてしまえば残り4点のいずれかの状態で芯が出ていないってことになる。

芯出しをさっさと終わらせるためにはまずフライホイールが一体どういう状態になっているかをささっと読み取るところから始めよう。

フライホイールの癖を見抜け!

ここまでわかったら実際にどんな手順で芯を出していくか、ざっくり書いていこう。

まずは横ブレを取る

上に書いたように、芯がずれる複合的要因はこの横ずれと他のズレになる。複合されるとどこがどうなのかさっぱりわからなくなるので、まずはこの横ズレを取ろう。

横ずれはフライホイールを含むクランクを組み立て後スプロケットシャフト側のフライホイールをひっぱたいて真っ直ぐを出す。
ピニオン側はキーが入っているので、叩いても動かないし、叩くとぶっ壊れるの要注意だ。

この横ずれを取る作業、規定のトルクをかけた後だとまー動かない。力いっぱいひっぱたいてもそうそう動かない。故に規定のトルクをかける前にちょこっとやっておくのが良いと思うよ。
横ブレが収まったらいよいよみんながよく見る芯出し台に乗せる。

今フライホイールがどうなっているのかを見抜く

いよいよ台に載せたら一体フライホイール(クランクな)が一体どうなっているのかを見抜く。
台にのせてぐるぐる回して、どこが開いているのか、とじているのかを数値と矢印でフライホイールの側面(わかりやすければどこに書いてもいいけど)に書いていく。
それをもとに正確な状態をつかんでいこう。

そのフライホイールの癖を見抜く

ある程度までわかったらいよいよフライホイールに力をかけて開いたり閉じたりしてみよう。ただしクランクピン周辺は力をかけるとぶっ壊れるかもしれないので、なるべく遠い部分に力をかけるよ。

そうすると微妙に動いて数値が変わっていくはずだ。
これでいきなり芯が出たら管理人は芯出しの神様が降りてきた!といって猛烈に喜ぶ。それはもう喜ぶ。喜びのあまりついついビールを飲む勢いで喜ぶが、そんな事は数年に一度あるかないかである。

ともかく通常であればこの作業を繰り返して、数値を取っていくが、何度かやっているとどっちか(ピニオン側かスプロケットシャフト側のフライホイール)が広がりやすい、もしくは閉じやすい癖みたいなのがあるのが気がつくはずだ。

この癖をさっさと理解するのが芯出しを早く終わらせるので一番大事な作業で、芯出し作業そのものにあまりなれていないようであれば芯出しをまずは諦めてこの癖を読むことに集中しよう。これも芯出しをさっさと終わらせるコツである。

終わったらさっさとケースに入れる

アレヤコレヤとやって芯が出ましたー!となった人ならわかるだろうが、この芯出しって以外とずれる。ちょっとぶつけただけでも動いちゃう事があるので、終わったらさっさとケースに組んでしまおう。
ということは、芯出しをする前にケースのリビルトを終わらせておく必要があるよ。

終わりに

いかがだったろうか?ちょっとわかりずらいかもしれないし、肝心の部分は具体的に書いていないと思う。ただ、どうすればさっさと芯出しができるかはわかっていただけたはず?だ。

バランス取りもそうだが、この芯出しも基本は単純作業の積み重ねでしかない。そのためこうすれば一発で終わるぜ!なんて便利な方法はなく、こうやってノウハウを高めていくしかないんである。
このブログがこれからハーレーの腰下と戦うメカニックの一助になれば幸いだ。

いやー、こんなんじゃわからんわ!

って人がいたら改めて質問コーナーから聞いてください。できる限り答えてみます。

ってことで終わり!


どーしたん?管理人…なんか嫌なことあったなら話をきこうか?

そう言って横ブレを取るためにハンマーをフルスイングしている管理人の作業を止める心優しいMであった(実話)


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