キャブの種類とセッティング
前回では固定ベンチュリーと可変ベンチュリーのささっとした特徴を書いてみた。
今回は可変ベンチュリーの種類とちょっとしたセッティングの話でも。
可変ベンチュリーの種類
- 強制開閉式可変ベンチュリー
ものものしい名前だけど、あくまでも負圧式が負圧による任意の開閉に対しての強制って意味である。
最大の特徴はベンチュリーを可変させるピストンのみでガソリンから空気までを計量する所で、バタフライ式のスロットルバルブを持たない。
これによって全開時にキャブ内径にはニードルが一本だけとなり吸入抵抗が極端に少ないため、全開時でのロスが少ない。古くはこの上下するピストンが丸い形状をしていたが、後にバルブ自体が板状になり極端にキャブの全長が短いフラットバルブ式が主流となっていく。
FCRやTMR(ハーレー用はHSって名前になる)などがこれにあたる。構造は後述する負圧式のほうが複雑ではあるが、高性能って点では間違いなくこの形式がキャブとしては最も進化した形であろう。
問題としてはアクセルで上下させる部品が他のキャブと比べるとでかいため全体的にスロットルが重くなるのと、セッティングが非常にめんどくさいところにある。
セッティングがなぜ面倒かは後述- 負圧式可変ベンチュリー
強制開閉に対して負圧式はエンジンが吸気する際の力を利用し、ピストンを上下させベンチュリーを可変させる。
基本的にはエンジンの負圧を利用するため、乗り手が完全に自由にベンチュリー径や燃料の調整を行うことができない。乗り手が調整するのは固定ベンチュリーと同じスロットルバルブで、スロットルバルブを開けるとエンジンとベンチュリーがつながり回転数が上がる→吸引力が高くなる→負圧ピストンが 上にあがってベンチュリー径が変わり空気とガソリンがエンジンに行くって感じなので、乗り手のスロットルワークにダイレクトに反応する他のキャブに 比べるとマイルドな印象となる。
つーか動作が複雑でうまく説明できないけど、大体こんな動作をする程度に受け止めてください。なんでこんな構造をしてるかっていうと、雑なスロットルワークに対して他のキャブと比べて追従性が高い、というか鈍感なため 誰が乗っても乗りやすいという特徴がある。
そのためどんな人でも乗れるのが目標の純正に多く採用されていた。
ハーレーの場合は1988年頃からインジェクションに変わるまでの全車種に採用されていたCVキャブがこれに当たる。
また、国産では1980年の早い段階から大型バイクに採用され始め、80年代後半にはほとんどの車種で負圧式可変ベンチュリーが採用されていく。このように各社純正で採用されていくほど乗り手を選ばず、セッティングもそれなりに自由にでき、且つ燃費もいいといいとこ沢山の構造をしているが、 逆を返せばダイレクト感とパワー感に欠け乗っていてもなにか物足りないという印象をもつキャブと言える。
こんな感じで固定ベンチュリーと違い、可変ベンチュリーは2種類ある。この可変ベンチュリー達、固定ベンチュリーが持っていないもう一つの特徴があって、
それは主に中速を担うニードルがあるということだ。このニードルのおかげで可変ベンチュリー群はセッティングの幅がとんでもなく広がり、泥沼へとはまることになる。
ニードルついてるキャブのセッティングあれこれ
インジェクションの項目でもちょっとセッティング云々について書いたけど、今回は主にニードル に焦点を当ててかいてみる。
このニードル、たしかジェットニードルと言われている。ジェットニードルの受け側をニードルジェットとか呼んで紛らわしいことこの上ないのでここでは ジェットニードルをただニードルと書いています。
まず固定ベンチュリーのセッティングをする際に何がどこのスロットル開度を受け持つかって模式図。
その前に、セッティングする際によく回転数でどうこうって話があるけど、あれは間違い。キャブのジェットは回転数に係らずあくまでもスロットル開度にのみ依存して仕事をする ということを覚えていてほしい。これを勘違いしてるといつまでもセッティング出ないよー。
縦が各ジェットの仕事量。横がスロットル開度だと思ってください…
真ん中の赤いのは…低速ポートということにしておこう。なんで実際に調整はできない。基本はスローとメインジェットだけなので交換部品が少ないって点では セッティングは楽に思える。
半面、中速がいまいちな場合スローとメインのみで中速のセッティングをださなきゃならず、場合によっては低速か高速部分を犠牲にしなきゃならない。
続いてニードルがある可変ベンチュリー。あくまでも模式図ってことを念頭に。
ちょっと盛ってあるけど、一気にこんだけ複雑になってくる。
なんでこうなるかっていうとニードルって一本で実に多彩な部分を受け持っているから。各部の説明をしてみると…
- テーパースタート
ニードルが細くなり始めるスタート位置。ニードルは先に行くほど細くなっていくけど、その細くなるのがどこから始まるかの指定。
ニードルが利き始める時の燃料を調整する。- テーパースロー
細くなり始めてからどの程度の角度で指定の太さになるか。名前はこれであっているかどうか自信がない。
そのニードルそのものの特性ってかどの程度濃くしたり薄くしたりの指標ってかなんていうか。- 太さ
そのまんま。テーパーと合わせて考える。細けりゃ濃くなるし、太いと薄くなる。
- 長さ
長さはメインジェットにバトンタッチするタイミングを変化させる。ただメインジェットが利くようになるにはある程度スロットルが開いている必要が あるため、極端に長かったり短かったりするわけではない。
セッティングというよりパワーを出すタイミング的なイメージがあるかなー。- クリップステップ
ニードルのセット位置を上下に変更することができる。これによってある程度の燃調を変えることが可能だが、燃調というよりタイミングを変える意味合い が強く、困った時にちょっといじってみたりする。ニードルを変更するわけではないのでお手軽にいじれるが、過度の期待は禁物。
と、ざっと思い出しただけでニードル一本でこれだけの要素があり、それぞれがスロットル開度によってガソリンを計量している。
セッティングをする際はこの特徴を把握しておき、微妙なスロットル開度を確認してその状態に合わせてニードルを選択してくという作業になるんだけど、 このニードルが種類が膨大な上にお値段が高い…
ハーレーみたいな単キャブならまだしも、4気筒でセッティングがずれまくっているようなやつをやるといろいろなニードル使ってセッティングを出さねばならず、 そのたびにニードルを買わなきゃならない。
しかも外れのニードルは基本的にもう使わないから無駄になっていく。気が付けばン万円もニードル買ってた何て事もある。つーか管理人がカワサキ空冷4発乗ってた時に CRキャブのセッティングで陥った罠の話である。
終わりに
キャブのセッティングはとにかく部品(ジェット)を買う羽目になる上に、基本がわかっていないとずっぷりと泥沼にはまる。
インジェクションは交換部品がないので、個人でいじってみるのも有りだとは思うが、キャブのセッティングはマジでバイク屋さんにお願いしたほうがいいよ。
でもそれでもっていうなら頑張って見てほしい。きっといい結果がマっているはず。
キャブの基本的な話はここまで。次回は要望があったので、究極の固定ベンチュリー、穴の芸術、可変ベンチュリーを目指した固定ベンチュリーのケイヒンバタフライ編で。
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